カイプロの西川です。月5,500THBで会計士・弁護士・社労士などの日本人専門家にいつでも気軽に相談できる顧問サービス「カイプロ」を運営しています。(詳細はこちら

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本内容が皆様の会社運営の一助となれば幸いです。

※本内容は執筆時点のものです。
※本内容は顧問サービス「カイプロ」ご契約者様へ提供した内容のうち、一定期間経過したものを利用しています。

貸倒引当金・貸倒償却の基礎知識

ご質問の要約

長期滞留売掛金につき、分割で損失計上することは可能でしょうか。また税務上は認められますか?

カイプロ専門家の回答

回答者:BM Accounting 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))
J Glocal Accounting 坂田(タイ税務・BOI専門家)

長澤さん写真
坂田さん写真

引当金での処理

回収不能であるか未確定で、貸倒の確率を一定見積もれる場合、会計監査人と協議のうえ貸倒引当金として、貸倒の確率が高まる都度段階的に引当計上し費用計上していくことが可能です。

なお、引当金計上時は回収不能かどうか未確定のため税務上は損金処理(※)できず、損金不算入費用(※)として税務申告時に加算処理(※)します。

カイプロ注:
損金処理:税務上認められる費用として処理すること。
損金不算入費用:会計上は費用計上されているが税務上は認められない費用
加算処理:損金不算入費用につき、税務申告書上で利益額(課税所得)を追加すること。

貸倒損失での処理

回収不能であることが確定している場合、分割処理できず全額を貸倒損失として会計上計上します。

なお税務上も認められるためには金額に応じた以下の要件を満たす必要があり、当該要件を満たさない場合は損金不算入費用で処理します。

債権金額貸倒償却が税務上認められるための条件
2,000,000THB超(1)支払請求がなされ、当該事件に対して適切な範囲で債権回収のための諸策がとられ、明確に記録されているが、以下の理由により、支払いがいまだに行われていない状態であること。
 ①債務者が死亡したか、または失踪宣告がなされた場合で、かつ、その債務者には支払いに充てる財産がない状態。
 ②債務者は事業を停止しており、かつ、優先権を有する他の債権者が持つ債権が、債務者が所有する財産よりも大きい状態。
(2)債務者に対して、すでに民事訴訟を提起したか、または、他の債権者が提起した訴訟において債務の支払請求を行っており、かつ、裁判所によって執行令状が発出され、執行官の最初の報告書には強制執行が行われた旨が記載されているが、債務者には支払いを行うための十分な財産がない状態。
(3)すでに債務者に対して破産手続き開始要求を裁判所に提起したか、または他の債権者もしくは清算人により開始された破産手続きにおいて、すでに債務に対する支払請求が提出されたが、残余財産の分配について債務者と和解が成立し、裁判所がそれを認可する命令を発したか、または債務者の破産宣告がなされ、すでに残余財産の最初の分配がなされたか、あるいは裁判所が訴訟の終了を命じた。  ※(2)または(3)の場合で、外国で行われた訴訟・申請等の場合、その国の法務当局によって発行された訴訟等の証拠書類がなければならず、またその証拠書類はタイ外務省の規定に従ってタイ語への翻訳証明をされていなければならない。
200,000超~2,000,000THB(1)支払請求がなされ、当該事件に対して適切な範囲で債権回収のための諸策がとられ、明確に記録されているが、以下の理由により、支払いがいまだに行われていない状態であること。
 ①債務者が死亡したか、または失踪宣告がなされた場合で、かつ、その債務者には支払いに当てる財産がない状態。
 ②債務者は事業を停止しており、かつ、先取り特権のある他の債権者が持つ債権が、債務者が所有する財産よりも大きい状態。
(2)債権者が債務者に対して、支払請求にかかる民事訴訟の提起を行い、裁判所がその訴えを認め、訴えを受理したか、または他の債権者がすでに提起した訴訟において、すでに支払請求(資金の配分請求)がなされ、裁判所がそれを受理した場合。
(3)債務者に対する破産宣告に関する申請が提出され、裁判所がその申請を受理したか、または他の債権者もしくは清算人から債務者に対して開始された破産手続きにおいて、すでに支払請求(財産の分配請求)がなされ、裁判所がそれを受理した場合。  ※(2)または(3)の場合で、外国で行われた訴訟・申請等の場合、その国の法務当局によって発行された訴訟等の証拠書類がなければならず、またその証拠書類はタイ外務省の規定に従ってタイ語への翻訳証明をされていなければならない。 ※(2)または(3)の場合、該当年度の期末日から30日以内に貸倒償却の社内承認を行う必要がある。
200,000THB以下(1)債権回収のための支払請求等の諸策が適切に行われているが、いまだに支払いが行われていない。 かつ、
(2)債務者に対して訴訟を提起しても、回収が見込める金額以上の費用がかかることが予想される。

(引用:ジェトロ https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/th/business/pdf/tax_007.pdf をもとに、2021年改正点を追記) 

※カイプロ注:200,000超~2,000,000THB以下の債権で一定の場合については、償却事由が生じた年度の期末日から30日以内に償却の社内承認をすることが税務上認められる要件となっているため留意が必要。

また社内確認用にタイ語の条文をお知らせ致します。(Article 4, 5, 6)
歳入局ページ:https://www.rd.go.th/2483.html

以上となります。

カイプロでは、月5,500THBで会計士・弁護士・社労士など複数の専門家に相談可能な顧問サービス「カイプロ」を提供しています。(詳細はこちら

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