カイプロの西川です。月5,500THBで会計士・弁護士・社労士などの日本人専門家にいつでも気軽に相談できる顧問サービス「カイプロ」を運営しています。(詳細はこちら

さて、本日は「駐在員給与への追徴課税事例」についてお話します。
2019年頃より、この追徴課税事例が多く発生しています。

税務調査で指摘を受けると、100万THB単位の追徴の可能性があり、リスクが大きいものです。

一方、対策さえすればリスクを下げられます。
大事な会社資金を守るために、該当ある場合にはしっかりと対策をすることが望まれます。

指摘の状況

以下のような場合、指摘を受ける可能性があります。

  • 駐在員の日本払い給与を本社からタイ法人へ請求
  • 当該給与の請求名目が「業務委託費(Outsourcing fee)」等となっている
  • タイ法人と駐在員間で雇用契約を締結しておらず、日本本社/タイ法人間の業務委託契約等となっている

このようなケースで、以下の指摘が発生しています。

avatar
担当官
日本本社への業務委託費支払額に対し、5%の源泉徴収税と、7%のVATを課す

結果、本来税金が発生しないはずの駐在員日本払い給与について、過去数年間の支払全額を対象に、100万THB単位の追徴となる事例を多く見聞きしています。

解説

※少々専門的のため、次の「対策」へ飛んでいただいても構いません。

「日本払い給与のタイ法人への請求」は本来「給与の立替払い」のため、この場合は税金が発生しません

しかし、これを「業務委託費(Outsourcing)」の名目で請求すると、

  • 「業務であれば利益があるはず」⇒(税務署が見積もった)利益に対して源泉徴収税が課税される
  • 業務として行うため、VATが発生

ということになります。

※より専門的な解説としては、駐在員がいわゆる「建設PE(コンサルタントPE)」に該当することになります。また、業務名目の海外への支払のため、「サービスの輸入」扱いとなり、PP36によるVATが発生します。

よく分からないという場合は、「業務委託費名目で本社から請求すると、税金・罰金が発生する」ということだけ覚えていただければと思います。

対策

「業務委託費」等の名目で請求を行うと指摘を受ける可能性があります。

したがって、あくまで「日本法人が立替払いをしている給与」であることを明確にすることで、課税リスクが下がります。

具体的対策は以下の通りです。

  • 駐在員給与の日本からの請求名目を「立替給与(Advance payment of salary」等とする。
  • タイ法人と駐在員間で雇用契約を締結する。
  • 駐在員の勤怠をタイ法人にて管理する等、タイ法人の役員・従業員としての勤務実態の証拠を整備する。

(追記)2021年頃より、業務委託費名目の請求・契約でなく立替給与名目の請求・契約である場合にも、当該指摘を受ける事例が多く出てきています。この場合、税務署担当官とのコミュニケーションによる撤回が難しいケースも想定されます。

このケースへの事前対策として、(もし可能であれば)「日本払い給与部分を減らし、タイ払い給与部分を増やすことで、タイ法人から日本本社へ海外送金する金額を減らす」ことも一案です。

課税は海外送金額に対して行われますので、送金額自体を減らしてしまえばその部分のリスクそのものが無くなります。給与支給の実態を変更するためハードルは上がりますが、日本払い給与額が大きい状況で指摘を受けると追徴額も大きくなりますので、1つの方法としてご検討ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?以下まとめを記載いたします。

事例

「日本払い給与のタイ法人への請求」を「業務委託費」等の名目で行うと、「業務であれば利益があるはず」として税金・罰金(追徴額と同額)が発生します。

対策

例えば以下を実施し、「駐在員はタイ法人の従業員であること」、「日本払い給与は単なる立替払いであること」を明確にします。

  • 駐在員給与の日本からの請求名目を「立替給与(Advance payment of salary」等とする。
  • タイ法人と駐在員間で雇用契約を締結する。
  • 駐在員の勤怠をタイ法人にて管理する等、タイ法人の役員・従業員としての勤務実態の証拠を整備する。
  • よりリスク低減を図るためには、日本払い給与部分を減らし、タイ払い猶予部分を増やすことで、タイ法人から日本本社へ海外送金する金額を減らす。

以上となります。

カイプロでは、月5,500THBで会計士・弁護士・社労士など複数の専門家に相談可能な顧問サービス「カイプロ」を提供しています。(詳細はこちら

本記事のようなタイでの税務トラブルに関する初期対応などのご相談も、課題が生じる都度、日本人専門家へ直ぐにご相談いただけます。

海外ビジネス現場ではリソースが限られています。
支援部隊が揃っている日本と異なり、何でも自分でやらなければなりません。

そんな時、ぜひ我々専門家を頼っていただきたいと思っています。

調べものの時間が削減できれば限られた時間を有効活用いただけます。また、専門家の見解を元により安全に事業を進めていただけます

タイでの会計税務、労務、法務のルール・実務に関し、

  • タイ人スタッフからの報告の妥当性を確認したい
  • トラブルが発生したのでやるべき初期対応について意見を聞きたい
  • 判断が必要なケースで他の日系企業で一般的にどのように進めているか知りたい

こうしたケースで、厳選された日本人専門家へ低価格で気軽にご相談いただけます。

この価格で複数の日本人専門家に相談できるサービスは当地では他にありません。
ご興味のある方は下記リンク先のサービス詳細ページから、または当サイトのお問合せフォームからご連絡をいただけますと幸いです。

>>5,500THB会計士弁護士社労士など日本人専門家いつでも気軽相談できる顧問サービス「カイプロ」の詳細ページはこちら<<