カイプロの西川です。月5,500THBで会計士・弁護士・社労士などの日本人専門家にいつでも気軽に相談できる顧問サービス「カイプロ」を運営しています。(詳細はこちら

本サービスへご相談のあった内容から、広く皆様に知っていただきたい内容を共有いたします。
本内容が皆様の会社運営の一助となれば幸いです。

※本内容は執筆時点(2022年7月)のものです。
※本内容は顧問サービス「カイプロ」ご契約者様へ提供した内容のうち、一定期間経過したものを利用しています。

合法化の概要

ご質問の要約

一部の大麻の食品利用等が適法になったと聞きました。今回の変更の法的な背景、適法対象の範囲、違法になる場合の罰則等をご教示下さい。

カイプロ専門家の回答

回答者:TNY Legal 永田(弁護士・弁理士)

永田弁護士の写真

合法化の背景

タイにおいては古くから医療目的で大麻が使用されてきた歴史があったものの、他国と同様に大麻の使用が禁止されてきました。

しかし、タイ経済にとって大麻使用合法化による利益が大きいと考えられ、医療・研究目的の大麻使用が合法化されるに至った背景があります。

合法化の範囲および内容

医療・研究目的の大麻使用に加えて、タイ政府は、大麻からの抽出物や特定の部位(葉、根、枝等)のうち、THC(Tetra Hydro Cannabinol、大麻エキス)含有率が0.2%以下であるものについては麻薬のリストから除外し、タイ国内の登録生産者から調達されたものであれば、食品、飲料、化粧品、医薬品等に使用することができます。もっとも、麻薬のリストから除外されていない大麻の使用については、引き続き禁止されております。

また医療用に家内利用する目的での大麻の家庭栽培を、FDAへの登録のみで行うことが認められました。

医療・研究目的での大麻使用
以下を満たすもの
・大麻からの抽出物や特定部位(葉、根、枝等)のうち、大麻エキス含有量が0.2%以下
・食品、飲料、化粧品、医薬品等への使用
・タイ国内の登録生産者から調達
医療家内利用目的での大麻の家庭栽培(要FDA登録)
上記以外の使用・所持
・吸引など娯楽目的のもの
・大麻エキス含有量が0.2%超の抽出物等 など
不可

罰則について

麻薬のリストから除外されていない大麻について、これを服用した場合には、1年以下の懲役もしくは20,000バーツ以下の罰金、またはその両方が科せられます(麻薬法 Narcotics Code B.E. 2564 (2021)162条)。

また、当該大麻を服用する目的で所持していた場合には、2年以下の懲役もしくは40,000バーツ以下の罰金、またはその両方が科せられます(同法164条)。

保健省の担当官によると、従業員への薬物検査において大麻物質が検出された場合には、会社は、当該従業員を会社所在地域の依存症治療センターにて治療を受けさせなければならないとのことです。

そして、当該従業員が自発的に依存症治療センターで治療を受けた場合には、上記の同法162条、164条の罰則は科せられないとされております(同法113条)。

従業員通知・就業規則の内容例

ご質問の要約

大麻の使用について、会社からの以下の通知を出す予定ですが、この内容で良いかアドバイスをいただけますでしょうか。

  • 大麻栽培及び利用は医療目的のみ認め、娯楽用には認めない
  • 医療目的であっても、会社に申告して使用すること

カイプロ専門家の回答

回答者:BM Accounting 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))
    TNY Legal 永田(弁護士・弁理士)

長澤さん写真
永田弁護士の写真

娯楽使用を認めない点

「医療目的」 や今回の合法化された「THCの含有率が0.2%以下のものの飲食等」以外は違法なままです。引き続き違法となるものは従来同様に社内規定での禁止が可能のため、この点を通知・規定化することは問題ありません。

一方、今回合法化された「THC含有率が0.2%以下のものの飲食等」については、就業時間中や事業所内での使用制限は可能と考えられますが、就業時間外・事業所外についての制限は難しいと考えられます。

ただし、錯乱状態であるなど業務に支障がある場合には、飲酒による酩酊状態と同様に規制が可能です

そのため、以下のような通知や規定の記載になるかと存じます。

医療・研究目的等での合法使用以外の大麻使用を禁止とする。

医療・研究目的等での合法使用についても、就業時間中または事業所内での使用や、使用の結果就業時間中または事業所内で錯乱状態でいることを禁止する。

事業所内への持ち込みの禁止も可能

ご質問の要約

事業所内使用のみならず、大麻の事業所への持込み自体も禁止・懲戒処分対象することは可能でしょうか。 

カイプロ専門家の回答

回答者:BM Accounting 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))

長澤さん写真

例えばアルコールについては会社敷地内への持込みの禁止も可能のため、業務上支障があるとして大麻の持込みについても禁止することは可能と考えられます。 

※ただし、医療等を目的に業務時間中の使用がどうしても必要な場合で例えばそのような医師の診断書があるような場合(実際には必ずしも業務中である必要はないと理解しておりますが)には、禁止の規定にかかわらず使用をしても懲戒事由とすることが出来ない可能性も考えられます。

事業所内での大麻栽培の禁止も可能

ご質問の要約

会社内の敷地で大麻の栽培を行っている従業員がいました。大麻自体は違法なものではない認識ですが、違法でないとしても社内でのこうした行為を禁止・懲戒処分対象することは可能でしょうか

カイプロ専門家の回答

回答者:BM Accounting 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))

長澤さん写真

合法化された大麻についても、就業時間中や事業所内での使用や栽培については、会社の事業や組織運営に影響を及ぼすものとして制限することは可能と考えられます。

取り扱うものが直接違法なものではない場合であっても、例えば会社内での飲酒、酒の製造や販売を禁止するような規定、それに反した場合の懲戒処分は可能と考えられますので、それと同様の取り扱いになると考えられます。

以上となります。

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