カイプロ、会計士の西川です。
低価格で複数の専門家に相談できる顧問サービス「カイプロ」を運営しています。
本サービスへご相談のあった内容から、広く皆様に知っていただきたい内容を共有いたします。この大変な状況の中、少しでも皆様のご参考になれば幸いです
本日は、「降格・減給時の留意点」となります。
コロナ禍の中、コスト削減の必要があり、これまで目をつむっていた降格・減給の問題に向き合わなければならない方も多いかと思います。
対応を進める際のご参考にしていただけますと幸いです。
目次
Q1 降格・減給が認められる条件
ご相談の要約
『従業員の降格、減給はタイ労働法上可能だが、不当な処遇だとして労働裁判所に訴えられるリスクがあるため慎重に行うべきだ。』と良く言われますが、実施の際の留意点を教えてください。
カイプロメンバーの回答
回答者:BM Accounting & Legal 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))(以下、他の質問も同様)

※他の質問も含め、長澤様回答をベースに内容編集をしています。
タイにおいては、従業員に不利益の生じる労働条件等の変更は、従業員の同意が必要となります。
「降格・減給」については「不利益」に該当するため、本人の同意が得られないものは無効とされる可能性があります。
したがって、降格・減給は本人の同意を得たうえで実施する必要があります。
Q2 不利益のない条件変更は認められるか
ご相談の要約
同意のない不利益変更が認められないことは分かりましたが、では不利益のない異動・降格・職務の変更であれば認められるのでしょうか?
カイプロメンバーの回答
不利益のない変更、例えば「減給のない降格」「減給のない職務変更」の場合、合理的なものであれば、本人の同意が無くとも会社の裁量として認められます。
しかし、給与等の減少が無いとしても、以下のような場合には、職務変更が認められない判例も見受けられます。
- 変更後の職務が入社時と大きく異なる場合
- 異動後に過度に負荷のかかる場合
- 嫌がらせ的な異動 など
Q3 業務変更に伴う手当減額は認められるか
ご相談の要約
ある従業員の成果が乏しく、業務の変更を検討しています。ついては当該従業員に支給していた手当(THB5000/月)を無くす事を考えています。
合意のない不利益変更が認められないのは分かりますが、こうした明らかに業務内容が変更になる場合でも給与・手当の減額は認められないのでしょうか?
カイプロメンバーの回答
タイでは、不利益変更について労働者の同意がある場合を除き禁止されています。
そのため、明らかに業務が変更になる場合でも、従業員の方へ理由を説明し、合意をしたうえで手当を減額することが必要です。
Q4 在宅勤務による通勤手当不支給は認められるか
ご相談の要約
在宅勤務により通勤が発生しなくなるため、通勤手当の不支給を考えていますが、可能でしょうか?
カイプロメンバーの回答
タイでは毎月定額で支給される手当の場合は給与と同様の扱いとなり、こちらも同意のない減額ができません。
したがって、在宅勤務で通勤が発生していないとしても、これまで毎月定額で支給していた場合には引き続き支給が必要となります。
なお、昨今の状況もあり、同意を得られやすい状況にはなっているかとは思いますので、会社の状況を説明し、納得・同意いただいたうえで減額することは可能です。
Q5 従業員との同意時の留意点
ご相談の要約
降格・減給・手当減額といった不利益変更のために従業員と同意をする際の留意点を教えてください。
カイプロメンバーの回答
後々のトラブルを避けるために、書面での同意が望まれます。
なお、物理的・精神的にサインを強要するなど、不当な方法での同意取り付けの場合には認められない判例も御座いますのでご留意ください。
Q6 減給見合い分の昇給・賞与での調整
ご相談の要約
タイでは同意のない減給等は一切認められないということでしょうか。何らか他の方法はないのでしょうか。
カイプロメンバーの回答
月給・定額の手当については同意のない減額は認められません。
しかし、昇給や賞与については会社で昇給率・賞与金額の保証をしていない限り会社の裁量で決めることが出来ますので、一旦、減給のない降格などの扱いとしたうえで、その後の昇給・賞与で調整をするケースは見受けられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?以下執筆者によるまとめを記載いたします。
- 月額給与(定額手当を含む)の減少が生じる降格・減給・手当不支給については、従業員との同意が必要
- そのような給与減額のない単なる降格・業務変更は、合理的な内容であれば可能
- 在宅勤務であっても、通勤手当を毎月定額支給している場合、支給継続が必要
- 同意が不可の場合、一旦「減給のない降格」などの扱いとしたうえで、その後の昇給・賞与で調整をすることは可能
以上となります。
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