カイプロ、会計士の西川です。
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本日は、COVID-19に関連しカイプロ内で相談のあった質問の一部につき、公益性の観点から広く皆様に知っていただきたい内容を共有いたします。この大変な状況の中、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。

内容は休業補償に関するものです。現在、24時間外出禁止も検討中という情報もあり、開始した場合には本内容以前の話となりますが、将来的に一時休業する場合等のご参考にしてください。

なお、COVID-19に関しては連日様々な情報アップデートがあり、本情報も執筆時点の情報となります。ご判断は、執筆日付をご確認のうえ、必ず最新の情報を収集したうえでお願いをいたします。

また、本記事はカイプロ専門家の意見を示したものであり、当局等の判断に関して何らの保証を提供するものではありません。

Q1 本人は感染していないが従業員を出社停止させる際の休業補償

質問の要約

本人または家族ではなく、本人が居合わせた施設にいた人が感染者と判明した場合に、出勤しないように指示した場合、当該社員に対して休業補償は必要でしょうか。

有給あるいは病気休暇がある場合はまずその消化、なくなれば無休(もしくは休業補償)とすることは可能でしょうか。

回答

回答者:BM Accounting & Legal 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))

先ず、休業補償については、以下の規定がございます。

  • 不可抗力による休業:賃金補償不要
  • 通常の業務運営が困難になる重大な理由があり、事前に労働局へ届出、許可した場合:75%の賃金補償

ご質問の「感染者との接触の可能性が高いような場合に従業員に休暇を求める」ことについては、現状では規定がなく、また、不可抗力や一時休業が認められる状況とも考えづらいため、100%賃金補償が必要になるかと存じます。

ただし、従業員同意の上でまずは年次有給休暇や病気休暇の消化をすることは可能と考えられます。

※カイプロ注
この質問の後、20年4月7日現在、SSOのサイトにて、「(直訳)被保険者が感染者の付き添いであるため、使用者の指示により出勤できず14日間隔離する場合」には、社会保険から休業補償が支給される旨が示されています。

休業補償が支給されるのであれば、それとの整合性から、会社からの支給は必要でない可能性もあります。

ただし、SSOサイトの情報は変更や他の情報との不整合等も指摘されているため、確実な情報の確定まで待ったうえでの判断が必要と考えます。

Q2 従業員に感染者が出た際における業務停止時の休業補償

質問の要約

万一コロナウイルス感染者が社内で出た場合、当局の指導により会社は14日間のcloseを余儀なくされると 理解しております。この場合、会社は社員に対して給与支払いの義務は満額生じるという事になりますでしょうか? 

回答

回答者:BM Accounting & Legal 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))

前述の通り、休業補償に関する通常の規定として、以下がございます。

  • 不可抗力による休業:賃金補償不要
  • 通常の業務運営が困難になる重大な理由があり、事前に労働局へ届出、許可した場合:75%の賃金補償

社内で感染者が出た場合には、当局への3時間以内の通知のうえで、当局の指導により業務停止となるかと存じます。

この場合の業務停止は会社にとっては不可抗力にあたると解釈できますので、その場合には賃金補償は不要と考えられます。

ただし、不可抗力になるかどうかの見解は明確ではありませんので、重大な事由や労働局への届け出の要件を満たして75%の賃金補償とする選択肢も考えられます。

これらのケースに会社または従業員側に別途補償が入るかについては今後の動向を確認する必要があるかと存じます。

※カイプロ注
この質問の後、2020年3月24日閣議決定にて、「2020 年3月1日~8月31日の期間において、COVID-19を含む危険感染症は不可抗力とする」旨が決定されています。

また、閣議決定にて、当局指導による業務停止の場合には、社会保険から従業員へ補償が入ることも決定されているため、それとの整合性の観点からも、社からの補償は不要と考えられます。

Q3 個人単位での一時休業の可否

質問の概要

会社の一部を一時休業とする場合、休業する・しないの対象はどのような単位で設定可能でしょうか。

部署単位(工場は休業、営業は休業しない等)、或いはもっと細かく、同じ工場でもあるラインは稼働、あるラインは休業などとすることは可能でしょうか。

或いは個人単位での一時休業(営業の同役職の者でも数名を休業、数名を出社など)は可能でしょうか。 

回答

回答者:BM Accounting & Legal 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))

法律上、一時休業は全部または一部とされており、一部休業も可能となります。

通常は部署や支店別など重大な理由での勤務継続が難しい理由が一部の部署などに該当することが認められれば可能となります。

個人単位とした場合のリスクとしては一部の個人の方から自分の業務については重大な理由には当たらないなどの主張をされた場合に、休業補償が認められずに全額の補償が必要となる可能性があります。

そのため、一般的には重大な理由と関連付けがしやすい部署単位とするケースが多いかと存じます。

Q4 一時休業に関する従業員の同意の要否

質問の概要

一時休業時の給与補償最低75%ですが、従業員の同意を得る必要はありますでしょうか? (完全に会社の専権事項という理解で良いのか、あるいは従業員側からもっと欲しいとか他社はもっと出しているとか言われた場合に、会社は彼らと”交渉”をして了承を得る必要があるのでしょうか?)  

回答

回答者:BM Accounting & Legal 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))

労働者保護法で規定される一時休業/休業補償は、

  • 通常の業務運営が困難になるほどの事業活動に支障を生じる重大な理由があること
  • 労働者および労働局への 3 労働日前の事前通知を行うこと

の2点を前提として、臨時的に事業の全部または一部を休業することを認め、会社は75%の休業補償が必要となります。

こちらはあくまでも法定に基づくものとなりますので、重大な理由がありかつ労働局に3営業日前までに届け出ている場合には同意を得る必要は必ずしも御座いません。

他社との比較(他社はもっと出している等)については、そもそも重大な理由と認められないということが無い限りにおいては、必ずしも交渉をする必要性はないと考えられます。

ただし、従業員の方に十分に理解をして頂くという意味で従業員説明をしておくことは望まれます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?以下執筆者によるまとめを記載いたします。

  • 「不可抗力」による休業は賃金補償不要。
  • COVID-19は「不可抗力」に該当。
  • 当局による事業停止指示の場合、従業員への保証は必要ない。
  • 事業停止指示以外の場合、どんな場合が「不可抗力」となるか、現時点で明確な条件は示されていない。
  • 不可抗力と認められない場合、条件を満たしての75%の賃金補償とする選択肢もある。
  • 75%補償の条件は、「通常の業務運営が困難になるほどの支障を生じる重大な理由がある」「労働者および労働局への 3 労働日前の事前通知を行う」こと。
  • 75%補償の場合、休業範囲は、会社全体・工場単位・部署単位等が考えられる。
  • 個人単位の休業は、「重大な理由」との紐づけば難しい場合が想定され、労働局が認めない場合、100%の補償が必要となる。
  • 一時休業時の保障条件については、労働局が許可をしている限りにおいて、従業員と合意は不要。ただし事前通知は必要であるし、良好な関係の観点から当然説明は行うのが望ましい。

以上となります。

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