カイプロの西川です。月5,500THBで会計士・弁護士・社労士などの日本人専門家にいつでも気軽に相談できる顧問サービス「カイプロ」を運営しています。(詳細はこちら

本サービスへご相談のあった内容から、広く皆様に知っていただきたい内容を共有いたします。
本内容が皆様の会社運営の一助となれば幸いです。

回答者:BM Accounting 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))
J Glocal Accounting 坂田(タイ税務・BOI専門家)

長澤さん写真
坂田さん写真

※本内容は執筆時点(2022年3月)のものです。
※本内容は顧問サービス「カイプロ」ご契約者様へ提供した内容のうち、一定期間経過したものを利用しています。

印紙税の概要

ご質問の要約

印紙税について、対象や金額など概要を教えていただけますでしょうか。

カイプロ専門家の回答

概要

契約内容や金額により契約書等への印紙貼付もしくは税務署への納税が必要です。印紙税のかかる契約内容は多岐にわたりますが、主な契約内容と税率は以下の通りです。(正本の場合)

契約内容印紙税率
不動産賃貸借契約0.10%(1,000THBにつき1THB)
株式譲渡契約同上
割賦購入契約同上
請負契約同上
金銭消費貸借契約、当座借越契約0.05%(2,000THBにつき1THB)
※上限10,000THB
総会にかかる委任状1回の総会にかかる委任:20THB
2回以上の総会にかかる委任:100THB
保証契約10,000THB超の場合:10THB
※金額により異なる。

契約書を正副作成するケースで副本については、正本にかかる印紙税が5THB以下の場合は一律1THB、5THB超の場合は一律5THBとなります。(副本でなく単なるコピーとして保管の場合には印紙不要です。)

100万THB以上の取引は窓口納付、それ以外は切手タイプのものを貼付

また、100万THB以上の請負契約や契約期間の賃料総額が100万バーツ以上である賃貸借契約等の場合については、印紙の貼付ではなく契約締結の翌月15日以内に歳入局の窓口で契約書の原本を提示し印紙税の納付が必要です。

上記以外のケースでは切手型の印紙を課税文書へ貼付します。

負担者

なお印紙税の負担者は契約者間で取り決めが可能ですが、一般的には受託者側が負担するケースが多くなっています。

民事訴訟との関係

なお、印紙貼付のない契約書等は民事訴訟時の証拠として認められません。

印紙未貼付の契約書等への対応

ご質問の要約

印紙未貼付の過去の契約書が見つかりました。どのように対応をすれば良いでしょうか? 

カイプロ専門家の回答

過去の契約についても対象となるものは印紙の貼付または申告・納税が必要となります。この場合の対応は「申告・納税のケース」、「切手タイプの印紙のケース」で異なります。

申告・納税のケース

100万バーツ以上の請負契約や契約期間の賃料総額が100万バーツ以上である賃貸借契約等の場合は歳入局窓口での申告・納税となるため、過去の契約について事後的に納税する場合、あるいは税務調査で指摘された場合には罰金が発生します。

罰金は200%~600%となります。幅がある理由は「税務調査前に自ら納付する場合」と、「税務調査で指摘された場合」では加算税の金額が異なるためです。

切手タイプの印紙のケース

上記の「申告・納税のケース」でない課税文書で今期のものであれば、切手タイプの印紙を今期の損金として購入・貼付することで、延滞税や加算税等が取られることはありません。

(カイプロ注:過年度分については本来的には該当年度以前に購入した印紙を貼付する必要がありますが、実務上、税務調査で指摘を受ける前に今期に印紙購入し貼付をすることで、指摘を受けないケースも多く見られます。)

Quotation・PO等への印紙貼付

ご質問の要約

契約書のほか、顧客からのPOも請負契約の課税文書とされるという話を聞きましたが、本当でしょうか。

カイプロ専門家の回答

2016年に歳入局のガイドラインが発表され、見積書にサインバックをもらう場合や、発注書(PO)にサインする場合など、当事者間の合意や諸条件の記載があるものは、契約書という形をとっていなくとも課税文書とみなされます。

ガイドライン Paw.153/2559(タイ語)
https://www.rd.go.th/publish/fileadmin/user_upload/kormor/newlaw/dn153.pdf

PO等へサインが無い場合でも課税対象

ご質問の要約

弊社では顧客からのPOに弊社・顧客ともサインはしていません。この場合でも課税文書に該当しますでしょうか? 

カイプロ専門家の回答

「サインバックがある場合」という文言が確かにガイドラインにありますが、ケーススタディーの一つとして、サインバックが無い場合でも、請負契約においてPO等の発行がある場合には課税文書に該当するという記載がございます。

サインの無い書類であっても、両社間での何らかの詳細合意と取れる文書に関しては課税文書に該当すると税務調査の際には判断されるかと思います。

サインバックの無いケースに関するケーススタディーは歳入局ガイドライン Paw.153/2559の7ページ目に記載があります。

請負契約の定義

ご質問の要約

タイにおける印紙税の対象となる請負契約の定義を教えてください。(日本における委任契約・請負契約のような違いはありますでしょうか?)

カイプロ専門家の回答

税法の印紙税法部分には具体的な「請負」の定義記載がないため、民商法典第587条の請負の定義を用いる形になるかと存じます。

民商法典の和訳です。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/th/business/regulations/pdf/corporate_018.pdf

民商法典の請負の定義を用いると、報酬の発生する業務の依頼や委託は請負契約となりますので、一般的には役務提供契約全般が請負契約とみなされるかと存じます。

金額未確定の請負契約にかかる印紙税の取り扱い例

ご質問の要約

請負契約において以下の場合、印紙税の計算はどのように行えば良いでしょうか?

  • 1年契約で単価のみの記載であった場合
  • Quotation上は単価記載のみであり、期間は『次回更新迄』など明示がない場合

カイプロ専門家の回答

単価のみの記載の場合、その書類はその取引の基本合意文書として課税文書ではあるものの、納税のための明確な金額記載が無いため、以下どちらかの対応になるかと思います。

  1. 予定での見込み額をもとに一旦納付し、最終的に確定額に基づき調整・追加納付する。
  2. 歳入局のガイドラインPaw.153/2559における「契約書で無くともPOにサインバックを受ける場合や、請求書や納品書等へのサインバック等を受ける場合は課税文書とみなす」というルールから、貴社が発行した請求書に基づき印紙税を納付。

100万THBを超える請負契約等については切手タイプの印紙では無く窓口での納付が必要ですので、基本契約(1年の契約書や期間明示のないQuotation)に紐づく取引の合計金額が100万THBを超える見込みの場合、事前に所轄税務署の担当官に納付方法について相談するのが良いかと思います。

これにより、一定の条件で納付方法の簡素化について担当官と合意したり、あるいは納付方法について事後的に指摘されるリスクの低減などが図れるかと思います。

以上となります。

カイプロでは、月5,500THBで会計士・弁護士・社労士など複数の専門家に相談可能な顧問サービス「カイプロ」を提供しています。(詳細はこちら

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