カイプロの西川です。月5,500THBで会計士・弁護士・社労士などの日本人専門家にいつでも気軽に相談できる顧問サービス「カイプロ」を運営しています。(詳細はこちら

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※本内容は執筆時点(2022年3月)のものです。
※本内容は顧問サービス「カイプロ」ご契約者様へ提供した内容のうち、一定期間経過したものを利用しています。

タイでの配当に関する諸規制の概要・留意点

※本項目は複数のご質問/回答を集約したものとなり、通常の回答よりも記載が長文となっています。

ご質問の要約

配当に関するルールの概要、注意点をご教示いただけますでしょうか。

カイプロ専門家の回答

回答者:J Glocal Accounting 坂田(タイ税務・BOI専門家)
    BM Accounting 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))
    TNY Legal 永田(弁護士・弁理士)
    Kaipro 西川(公認会計士)

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配当決議

タイの非公開会社は、株主総会の決議(臨時配当の場合には取締役の決議でも可)によって配当を行うことが可能です。

配当可能額と準備金

タイの非公開会社は、株主総会の決議(臨時配当の場合には取締役の決議でも可)によって配当を行うことが可能です。

配当時に利益剰余金がプラスの状態であれば原則として配当が可能です。(当期赤字でも、累積の繰越利益剰余金残高がプラスであれば可能)

配当を行う際は「登録資本の1/10の金額まで(または付属定款の定められた額に達するまで)、配当の都度、利益の1/20を利益準備金として積み立てる」ことが必要です。(民商法典1202条)

そのため、その配当によって準備金へ繰り入れられるべき金額分は配当可能な金額から除かれます。

また、民商法典1202条における「利益」の定義が明確でないため、実務上、以下のいずれかの5%(1/20)を配当の都度積み立てていることが多いです。

  • 当期利益
  • 配当額
  • 未処分利益

(定義の曖昧さから、保守的に資本金の10%を先に積み立ててしまうケースもあります。)

なお、日本では配当額に対する%で定められているため、日系企業では配当額の5%を採る企業も多いです。

配当額の5%を積み立てる場合、(準備金が未だ資本金の10%に達していない場合には、)繰越利益剰余金の100/105の金額まで配当が可能です。(以下、例1)

ただし、過去の配当の結果、既に準備金が資本金の10分の1まで計上済みの場合、利益剰余金を全額配当可能です。(以下、例2)

例示:
・資本金:1,200万THB(=準備金積み立て要求上限額:120万THB)
・利益剰余金:105万THB    の場合

例1例2例3
既存の準備金積み立て額0THB 120万THB119万THB
配当可能額100万THB105万THB104万THB
その配当での準備金積立額5万THB0THB ※ 1万THB

※既に119万THB積立済みであり、残り1万THBで要求上限額の120万THBとなるため。

法規制上の分配可能額は上記の通り(剰余金がプラスで配当可能。ただし準備金へ積み立てられるべき部分は除く。)ですが、実際の配当は現預金から行うため、実際に配当可能な金額の計算時には現預金残高の勘案も必要です。

源泉徴収

配当は原則10%の源泉徴収の対象です。例えば配当額が100万THBである場合、10万THBはタイ歳入局へ申告・納税のうえ、残額の90万THBを株主へ送金します。

ただし、以下の条件を全て満たす場合には配当に係る所得が免税となるため、源泉税控除は不要となります。

  • 配当受領者がタイ国内の法人である
  • 配当権利の確定の前後6カ月間(前3か月、後3か月)、25%以上の議決権を保有(※)
  • 配当を行う会社・株主間で相互に株式持ち合いをしていない

※当該6カ月間の間に追加取得をした部分があっても、免税対象は当該6カ月間に渡り保有していた部分のみになると考えられます。(権利確定の直前などに25%から30%まで追加取得をしても、免税対象は25%部分のみ) 

受取り側での課税

上記の免税要件に該当する国内の法人株主の場合、受取配当金は法人税の確定申告において益金不算入となります。(収益としてなかったこととし、所得を減じる調整(減算)を行う)。

免税要件に該当しない国内の法人株主の場合、受取配当金は法人税の確定申告において50%部分のみ益金不算入となります。この場合には源泉徴収もされているため、これは他の源泉税と同様に法人税から控除可能です。

(参考|配当受領者がタイ国内株主である場合の課税取り扱いまとめ)

株主種別タイの免税要件源泉徴収法人/個人所得税
法人株主該当(免税)不要全額が益金不算入(※1)
該当しない(非免税)必要(※2)50%が益金不算入
個人株主(参考)NA必要(※2)全額が課税対象

※1:法人税の確定申告上、収益としてなかったこととし、所得を減じる調整(減算)を行う。
※2:他の源泉税と同様に、確定申告時に控除可能。

(参考  親会社が受取る配当への日本での課税)

親会社等の日本所在の法人株主の場合、6カ月以上継続して25%以上の外国子会社・関連会社の株式を保有している場合には受取配当金の95%部分が益金不算入となります。この場合、95%は日本の法人税が課税されない一方で、源泉徴収税は外国税額控除に使用できず、また源泉税の損金算入もできません。(税負担は配当全額に対する10%のタイ源泉徴収税および配当の5%部分に対する日本の法人税となる。)

国税庁|外国子会社から受ける配当等
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/091228/01_02.htm

支払期日

配当の実行は株主総会決議(中間配当の場合は臨時株主総会または取締役会決議)から1か月以内に支払いを行う事が必要です。

送金時の銀行への提示書類

取り次ぎ商業銀行によって提示依頼を受ける内容が異なりますが、一般的には下記の資料の開示要求を受ける事があります。

  • 登記簿謄本
  • 株主名簿
  • 配当決議を行った議事録

配当可能額計算の流れ

ご質問の要約

実際の配当可能額の算出はどのような流れで行えば良いのでしょうか?

カイプロ専門家の回答

回答者:J Glocal Accounting 坂田(タイ税務・BOI専門家)
    Kaipro 西川(公認会計士)

坂田さん写真
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配当可能限度額の算定ですが、以下のような流れでの検討となります。

  • 決算日の剰余金の確認
  • 決算日以降、分配時点までの剰余金の増減を確認し、分配時点での剰余金の確認
  • 実際の配当は現預金から行うため、現預金残高と当面の資金繰りを考慮し配当額を決定

また、配当可能額は準備金の影響も受けます。(その配当によって準備金へ繰り入れられるべき金額分は配当可能な金額から除かれます。)

以上となります。

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