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今回はタイにおけるVATの基礎知識の解説記事のうち、3/4回目(繰越し・還付)になります。
第1回:タイVATの概要
第2回:輸出・輸入の取扱い
第3回:繰越し・還付の取扱い(本記事)
第4回:タックスインボイス
解説者:Kaipro 西川(公認会計士)
※本内容は執筆時点(23年6月)のものです。
繰越しと還付の概要
解説
続いて繰越と還付についてです。最終的には事業者のVATの負担は原則としてゼロとなりますが、一時的には資金的に負担をします。これは、後に補填されてプラスマイナスゼロになりますが、その補填の方法は以下3つになります。
- 支払った仕入れVATを売上VATの収入で賄う
- 仕入れVATの繰越(その後売上VATで賄う)
- 還付
輸出の場合を例に、上記3つの方法を解説します。
売上VAT収入で賄う
会社全体でVAT収支を計算し、国内売上のVAT収入が会社全体の仕入れVATを上回っていれば、仕入VATを賄うことができます。
繰り越し
次に繰越ですが、同月の国内売上VATが少ない場合、輸出売上のために払った仕入れVATを賄い切れません。この場合、一時的に資金負担した分が残ってしまいますが、この部分を翌月以降に繰り越し、将来の国内売上VATが増える場合には、その将来の売上VATで賄います。
還付
最後に還付ですが、将来の国内売上VATが増える見込みが少ない場合、一時的に資金負担した仕入VATは時間が経っても補填されません。この場合、税務署から還付を受けて負担を精算します。
なお仕入VATが売上VATよりも多い場合、繰越をするか還付をするかは、月次のVAT申告書(PP 36)において毎月選択します。
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還付に伴う税務調査
解説
還付申請を行うと、原則として税務調査が行われます。この際、そもそも税務調査が始まるまで数年を要するケースや、また税務調査自体も厳しく、申請した金額の半分しか戻らない、あるいは全く戻らない場合もあります。
そのため、可能な限り売上VAT収入で賄うことが安全です。これには繰越も含みます。現時点では仕入VATの方が多い状況でも、将来的に国内売上が増える見込みがある場合は、繰越処理を行い将来の売上VATで賄うことが可能です。
しかし、どうしても国内売上の割合が増える見込みがない場合は、還付申請をして還付を受けることになります。その際は、還付申請は毎月行った方が良いとされています。例えば1年間など長期にわたり繰越し処理を行い、1年に一度まとめて還付申請をすると、1年間で積み上げた要還付額を一括で申請することになります。しかし、税務調査は還付申請1回に対して1回行われるため、申請額が大きい場合は、税務調査が厳しくなる傾向にあります。
これに対し、毎月還付申請を行うと、1回1回の金額が少なくなります。その結果、税務署も少ない金額に対する調査コストが問題となり、書類の提出とチェックのみで対応し、問題がなければ返すという簡易調査で済むことも多いのです。
また、還付申請後に手続きが停滞するケースが多く見らます。その場合、フォローアップが必要となります。税務署のオフィサーとのミーティングなどを通じて停滞原因を確認し、オフィサーの名前を確認して議事録に残すことなども重要となります。
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(参考)輸出型企業の特例
国内仕入れ・輸出の事業形態では恒常的に還付ポジションとなるため、以下の制度が用意されています。(申請フォーム:SO1)
申請時には税務調査が実施されます。2年間有効で、更新時には再度調査・審査があります。
第3回は以上となります。
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他のVAT解説記事はこちら。
第1回:タイVATの概要
第2回:輸出・輸入の取扱い
第4回:タックスインボイス
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