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本内容が皆様の会社運営の一助となれば幸いです。

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本Q&Aの回答者:BM Accounting 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))

長澤さん写真

解雇の区分

解雇の区分には大きく以下3つの区分が御座います。

・不当解雇(解雇補償金+損害賠償の支払いが必要)
・正当な解雇(解雇補償金の支払いが必要)
・懲戒解雇(解雇補償金の支払い不要)

不当解雇/正当な解雇

色々と注意点はありますが、先ずは不当解雇を避ける必要があります。

過去の労働判例では例えば、以下のような状況で、不当解雇として損害賠償金(一般的に勤続期間1年につき1か月)の要求が認められているケースが御座います。

理由がない(まったく説明がされていない)
・単に会社や上司と意見が合わないことが理由である
・会社の命令違反による解雇で命令が重要ではな
・利益減少があっても利益計上があり事業縮小とは認められない

そのため、できるだけ労働裁判を起こされないよう、以下のような対応が望まれます。

十分な説明を行う
・法令に従って手続を行う
 - 事前通知(1賃金期間前、整理解雇の場合は60日前)※1、※2
 - 年次有給休暇の残日数買い取り  ※3
 - 解雇補償金支払い(+整理解雇の場合は特別解雇補償金)※4
 - 退職から3日以内の給与支払い

なお、妊娠を理由とした解雇は明文で禁止されています。

※1 1賃金期間前:解雇通知日から起算して2回目の給与支払い日が到来するまで(1月の給与日に通知をした場合、2月の給与日をもって解雇が可能)。
※2 事前通知期間の給与相当の金額を支払う場合は即座に解雇可能。

※3 年次有給休暇の買い取りは以下記事参照
「タイでの有給休暇の繰越し/買取りのQ&A」
https://kaipro.link/articles/carry-forward-and-pay-out-of-unused-annual-leave-in-thailand/

※4 解雇補償金は下記のテーブルに基づき支給が必要。
120日~1年未満:30日分賃金相当
1年~3年未満:90日分賃金相当
3年~6年未満:180日分賃金相当
6年~10年未満:240日分賃金相当
10年~20年未満:300日分賃金相当
20年以上:400日分賃金相当

特別解雇補償金は以下記事参照
「タイ|整理解雇(事業所閉鎖,業績不振,機械化等)の基礎知識」
https://kaipro.link/articles/restructuring-termination-in-thailand/

懲戒解雇

懲戒解雇の概要

次に懲戒解雇ですが、以下の場合には懲戒解雇扱いで解雇補償金の支払いは不要となります。(労働者保護法119条)

故意に会社に損害を与えた業務上の不正を行った、会社に対し故意に刑事犯罪を犯した場合
不注意により会社に重大な損害を与えた場合
その他就業規則違反等の場合
・合理的な理由なく3日間連続して職務を放棄した場合
・最終判決により懲役刑を受けた場合

就業規則違反による場合には、違反が重大な場合には即時解雇が可能ですが、軽微なものの場合は警告書(1年間有効)が同じ違反内容について複数枚の場合に解雇が有効となります。(=警告書発行の後、1年以内に同じ違反があった場合)

ただし、あまりにも違反が軽微な場合は複数でも懲戒解雇に至らないケースもございます。

懲戒解雇による解雇通知の例

懲戒解雇事由にあたる場合、一般的には会社から懲戒解雇通知を出し本人へ渡します。
通知には以下の内容を盛り込むべきと考えます。

  • 懲戒の事由・経緯(複数枚の警告書による解雇の場合は過去の警告書の参照(日付/内容等)) 
  • 上記の懲戒解雇事由にあたるため労働者保護法119条に基づき解雇補償金・事前通知なく即時解雇する旨
  • 上記の内容に同意し、本退職について補償金など一切の金銭を今後要求しない旨(可能であれば) 

解雇通知にご本人のサインをもらうのが望ましくなりますが、サインがない場合でも会社側、立会人のサイン(HRマネジャーや上司など)のみでも通知としては有効となります。

被解雇者が労働局に駆け込む場合

ご本人が解雇に不満であり解雇補償金や損害賠償金などを求める場合には労働局福祉課に駆け込む可能性があります。

その場合は会社宛に出頭の要請があり、資料や取締役・HRマネジャー・上司の方などからのヒアリングをし会社としての主張とご本人の主張をもって担当官からの調停を行います。

以上となります。

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