カイプロの西川です。月5,500THBで会計士・弁護士・社労士などの日本人専門家にいつでも気軽に相談できる顧問サービス「カイプロ」を運営しています。(詳細はこちら)
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本サービスへご相談のあった内容から、広く皆様に知っていただきたい内容を共有いたします。
本内容が皆様の会社運営の一助となれば幸いです。
※本内容は執筆時点(22年8月)のものです。
※本内容は顧問サービス「カイプロ」ご契約者様へ提供した内容のうち、一定期間経過したものを利用しています。
回答者:TNY Legal 永田(弁護士・弁理士)
タイ下請法の概要
ご質問の要約
21年12月施行のタイ下請法について、概要をご教示頂けますでしょうか?
カイプロ専門家の回答
法的位置づけ
下請法との点、これまでは日本における下請法のような規制がタイではありませんでした。
そして、今年の12月に施行されるガイドラインとして、2017年の取引競争法(日本における独占禁止法)に関し、2021年に下請け業者の保護として日本の下請法に類似する規制として新たなガイドラインが制定されたという状況になります。
このガイドラインは、取引競争法の禁止行為を定める細則としての制定ですので、違反すれば、取引競争法違反(57条違反)となり、行政罰や損害賠償請求の対象となります(取引競争法60条、69条、82条)。
適用対象
このガイドラインの対象となる中小企業は、
①従業員200人以下、かつ、年間収入5億THB以下の商品製造者
②従業員100名以下、かつ、年間3億THB以下のサービス提供者又は卸売・小売業者です。
(※22年8月改正後の定義)
この①または②から商品購入やサービス提供を受ける場合は、原則45日以内に支払いを行う必要があるという規制になります。
一方、購入者側については特に適用対象として規定がないため、上記①②よりも小さい会社であっても、形式的には適用があることになります(実際に違反とされるかは、現状不明です。)。
カイプロ注:
農産物又はその加工品の販売、製造及びサービスに関する与信期間は30日となります。
ガイドライン原文
本ガイドラインは、Office of Trade Competition Commission (OTCC) 取引競争委員会事務局
https://otcc.or.th/ から発表されています。
以下のリンクから、本ガイドラインのタイ語原文を入手することができます。
https://otcc.or.th/wp-content/uploads/2021/06/%E0%B8%9B%E0%B8%A3%E0%B8%B0%E0%B8%81%E0%B8%B2%E0%B8%A8-Credit-Term.pdf
罰則
ご質問の要約
この下請法について、罰則はどのような内容でしょうか?
また、どの程度厳格に運用されるのでしょうか?
カイプロ専門家の回答
このガイドラインに従わない場合、取引競争法(Trade Competition Act)の第57条5号に違反となり、
第60条により、取引競争委員会から当該行為の停止命令等を受ける可能性があり、
第69条により、損害を受けた者からの損害賠償請求、または
第82条により、違反年の売上高の10%以下の罰金、事業開始年度に違反した場合は、100万バーツ以下の制裁金が科される可能性があります(行政罰)。
加えて、第60条に違反した者は、600万バーツ以下の制裁金、ならびに、違反が継続した場合には1日あたり30万バーツ以下のさらなる制裁金を科される可能性があります(行政罰)。
なお運用の厳格度については現時点では不明です。
45日超の与信期間を継続する場合の相手方との合意
ご質問の要約
資金繰りの関係で、45日超の現在の与信期間(60日)を継続予定であり、購買先も了承しています。
ガイドライン上、理由があり合意があれば45日超も可能と理解していますが、どのような形で双方合意(合理的な理由説明など)をしておくのが良いでしょうか。
カイプロ専門家の回答
ご記載の通り、45日を超える与信期間を事前に合意する場合は、契約において事業・市場・経済の観点から受け入れ可能な理由がなければならないとされています。
ただ、この「理由」について具体的にどのようなものが該当するのか未だ明確ではありません。そのため、保守的に考えると45日に設定することが無難だとされています。
しかし、双方合意されているということであれば、少なくとも改めてその日数について契約書を作成し合意しておき、その際に、なぜ60日とするのかについて理由をできる限り多く、かつ明確に記載しておくことがいいかと考えます。
資金繰りの問題も理由の一つとして記載は可能と考えます。ただ、これのみで合理的な理由とされるかは難しいところです。他にも考えられる理由を記載いただき、契約書を締結することが現時点での対応となると考えます。
45日の起算日の考え方
ご質問の要約
「製品の引渡しまたはサービスの提供がなされた日から起算して、45 日以内に支払う」との内容があります。
通常、タイでは締め日にビリングノート(合計請求書)を発行し、この日から起算して支払日が設定されることが一般的であるように思います。この法令ではこの点、ビリングノート日付から起算して45日で良いのでしょうか?
カイプロ専門家の回答
このガイドラインにおける与信期間の計算は、「合意された商品またはサービスの数量や種類などに従い、商品やサービスが引き渡され(提供され)、正確な書類提出が完了した日から開始される」とされています。この「書類」が何を指すのかは、ガイドラインの施行における詳細がまだ不明の状況です。
そのため、合計請求書の発行から45日といえるかは現時点では不明確であり、「商品やサービスが引き渡され(提供され)」たことを示す書類交付から45日以内と考えることが無難かと思います。
※カイプロ注:「正確な書類提出」の提出者が売り手であるとすると、「商品やサービスが引き渡され(提供され)」たことを示す書類とは、Invoice等であると考えられます。
以上となります。
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