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本サービスへご相談のあった内容から、広く皆様に知っていただきたい内容を共有いたします。
本内容が皆様の会社運営の一助となれば幸いです。

回答者:BM Accounting 長澤(社会保険労務士、米国公認会計士(inactive))

長澤さん写真

※本内容は執筆時点(24年5月)のものです。
※本内容は顧問サービス「カイプロ」ご契約者様へ提供した内容のうち、一定期間経過したものを利用しています。

有給休暇付与の一般的方法

ご質問の要約

有給休暇の付与の方法について、タイにおいて一般的に採用されている方法を教えてください。

カイプロ専門家の回答

タイにおいて、有給休暇の付与ルールの原則は以下となります。

  • 従業員ごとに入社から1年経過時点で6日付与する

この6日分の取扱いは「それまでの1年間の勤務分に対する付与」となります。

ただし、実務的には労働者保護法30条4項(比例付与の条項)に基づく以下の方法がより一般的です。

  • 期初などを一斉付与日とし、一斉付与日時点で勤務期間が1年に満たない従業員については期間按分をし付与する

その他、上記の労働者保護法上のルールと比較して従業員により有利な対応として以下のような方法も見られます。

  • 期初などを一斉付与日とし、付与日に6日付与する
  • 期初などを一斉付与日とし、入社日から付与日までの期間分を入社日に付与する(いわゆる前倒し付与)

労働者保護法上のルールを上回る条件を採用する限り、このような他の方法も認められるものになります。

半日単位、時間単位での取得は原則各社ルールで可能

ご質問の要約

現在当社では日単位での有休取得を行う制度としていますが、時間単位、半休(午前/午後)単位での有休制度の導入は可能でしょうか。

カイプロ専門家の回答

タイでは年次有給休暇の半日単位や時間単位での取得については労働者保護法での規定が特段ありません。そのため、従業員に不利にならない範囲で各社ルールを規定することが一般的です。

試用期間であっても対応する有給休暇の付与は必要

ご質問の要約

タイにおいて、有給休暇を試用期間終了後の期間部分にのみ付与することは可能でしょうか。

カイプロ専門家の回答

労働者保護法では試用期間についての特段の規定がないため、試用期間であってもあくまでも雇用契約の開始として取り扱う必要があります。

そのため、試用期間かどうかに関わらず貴社で採用する付与ルール(一斉付与日に入社日からの按分計算などで付与など)に基づき付与する必要があります。

有給休暇の消化目標ルールはない

ご質問の要約

タイでは日本のように1年間で有給休暇の消化〇〇日必要などの決まりはありますでしょうか。

カイプロ専門家の回答

タイの法律上年間6日以上の付与が規定されていますが、日本のような消化そのものへの規定や罰則はありません。

法定有給を出勤率により制限することは法律上不可

ご質問の要約

日本のように「出勤率が80%未満の者には翌年の有給休暇を付与しない(あるいは付与日数を減らす)」ことはタイにおいて法律上可能でしょうか。

カイプロ専門家の回答

タイ法定の年間6日間の年次有給休暇については、日本のような出勤率による制限はできません。

一方、法定を超える日数を会社で設定している場合にその部分の付与ルールとして出勤率を設定することは可能です。

ただし、従来出勤率の設定がなくこれから設定する場合には不利益変更にあたりますので、従業員の個別同意が必要と考えられます。

取得申請の却下、および関連する懲戒処分の対応例

ご質問の要約

繁忙期中の有給休暇の申請に対して、事業計画に支障をきたすとして却下を検討しています。

当社就業規則では「年次有給休暇の申請は、当該期間休む事で業務または事業計画、あるいは申請した日程から他の日程へ変更されたりする可能性がある」という規定がありますが、実際にこれを適用することは法律上可能でしょうか。

また、従業員が取得日の変更に納得しない場合、どのように対応をするのがよいでしょうか。

カイプロ専門家の回答

年次有給休暇について、労働者保護法30条に基づき労使合意での取得日の決定(いわゆる時季変更権の行使)が可能とされています。そのため、ご記載のように会社の事業計画等を理由として有給休暇取得日を変更することを就業規則で規定し、運用をすることは法律上可能となっています。

この点、実際に労働局に駆け込まれたケースや労働裁判へ発展したケースでも会社側の変更権が認められているケースが見られます。(年次有給休暇の申請を認めなかったにも関わらず出社しなかった場合に、3日連続の正当な理由のない欠勤として懲戒解雇となったケース)

一方、会社側の「業務上の都合」の説明の合理性や、従業員側の申請内容も総合的に勘案して、従業員側の主張が認められたケース(法定の解雇補償金を下回る金額など一定程度の補償金で和解したケース)も事例としてはみられます。

そのため、取得日の変更について従業員が納得せず欠勤をした場合で懲戒処分を検討する場合には、争いとなる場合に備え以下などを総合的に勘案して判断することが望まれます。

  • 時季変更権について就業規則で規定をしているか
  • 現在の会社運営実態において従業員側のみで取得日を決定しているような実態がないか
  • 会社の申請取り下げの説明資料などのエビデンスの保全状況
  • 該当従業員に関するその他の懲戒事由や勤務状況 など

以上となります。

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