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本サービスへご相談のあった内容から、広く皆様に知っていただきたい内容を共有いたします。
本内容が皆様の会社運営の一助となれば幸いです。

回答者:TNY Legal 永田(弁護士・弁理士)

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※本内容は執筆時点(23年5月)のものです。
※本内容は顧問サービス「カイプロ」ご契約者様へ提供した内容のうち、一定期間経過したものを利用しています。

事業所移転時の特別解雇補償金の基礎知識

ご質問の要約

労働者保護法により、事業所移転時に解雇補償金の支給が必要な場合があると理解しています。

今般、事業所移転に際しある従業員が移転に伴う特別な手当(移動時間の増加に伴う時間的補償など)を要求しています。このような手当も法律上支給が必要でしょうか。

カイプロ専門家の回答

労働者保護法120条は、

  • 事業所移転が労働者又は家族の日常生活に重大な影響を与える場合、
  • 会社は30日以上まえに移転を労働者に通知し、
  • この場合に労働者は勤務地移転を望まない場合に雇用契約の解約を書面により通告でき、
  • この解約の場合にも解雇補償金(特別解雇補償金)を受領できる

という規定です。

仮にこれに該当するとしても、労働者から解約が可能(補償金も受領できる)だけであり、継続にあたってその他の手当を支給することは法律上要求されていません。そのため、社内規則上の交通費の変更などは必要ですが、その他の特別な手当を支払う法的な義務はないと考えます。

日常生活への重大な影響の判断要素

ご質問の要約

10kmほどの事業所移転を考えております。過去のケースからこの10kmというのは、「日常生活に重大な影響を与える」 か否かの判断に関してどの様に判断されていますでしょうか?

カイプロ専門家の回答

労働者保護法120条における「日常生活に重大な影響を与える」 か否かの判断に関しては、3つの考慮要素が存在します。

1、移動時間:こちらには起床時間、出勤前に家で行わなければならない用事、家を出る時間や事業所につく時間、家から事業所への通勤時間が考慮されます。

2、(増加する)出費:こちらでは、ガソリン代、MRTやBTSの電車賃、家賃、子供の教育のためにかかる費用が考慮されます。

3、家族:従業員が、両親の世話をしなければならないか、配偶者の有無、子供の有無等が考慮されます。

これら3つの考慮要素は、総合考慮され、一つだけの考慮要素に該当する場合は「重大な影響」はない、と判断がされる傾向にあります。

これらを総合考慮するので、10㎞離れているということが、申し出てきた当該従業員との関係で上記3つの要素を考慮して重大な影響といえるかが判断されます。

なお、参考となる判例は以下のものです。
(参考:最高裁の事例 8759/2558)
事業移転が行われその結果、以前の事業所から当該従業員の自宅までは3キロほど離れていたのに対し、新事業所は自宅から58キロほど離れ、かつ当該授業員は56歳で病気を抱え、当該従業員による看護が必要な姉と同居していた事例では、裁判所は当該従業員およびその家族の通常の生活に重大な影響があると判断し、特別解雇補償金の支払いを会社に命じています。

重大な影響はないと考えられる場合の対応例

ご質問の要約

非常に短距離での事業所移転を予定しています。この場合、従業員が退職を望む場合に解雇補償金の支払いが必要でしょうか。

カイプロ専門家の回答

この移転が、労働者保護法120条における「日常生活に重大な影響を与える」といえるかですが、非常に短距離の場合には必要ないとされる可能性の方が高いと考えます。

ただ、不支給の形で退職した後に労働裁判所に提訴してくる可能性もあり、また労働裁判所は労働者に有利な判断をする傾向があるため、その対応などを考慮すると、一定額の支払をして退職してもらうということもあり得る対応かと思います。この場合、合意退職の形式で合意書を作成しておく必要があります。

以上となります。

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