カイプロの西川です。月6,000THBで会計士・弁護士・社労士などの日本人専門家にいつでも気軽に相談できる顧問サービス「カイプロ」を運営しています。(詳細はこちら)
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本サービスへご相談のあった内容から、広く皆様に知っていただきたい内容を共有いたします。
本内容が皆様の会社運営の一助となれば幸いです。
回答者:TNY Legal 永田(弁護士、弁理士)
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※本内容は執筆時点(25年1月)のものです。
※本内容は顧問サービス「カイプロ」ご契約者様へ提供した内容のうち、一定期間経過したものを利用しています。
電子署名の方法、電子署名可能な書類の範囲
ご質問の要約
電子署名(サイン・社印)を行う際、どのような方法で、またどのような書類であれば電子署名可能でしょうか?
カイプロ専門家の回答
原則として、直筆サインが法律上要求されている書類以外全ての書類(契約書、PO等)について電子署名が可能です。
電子署名の方法としては、例えば以下があります。
・署名・社印(カンパニーシール)の画像を電子書類へ貼り付け
・実際の署名・押印した書類をPDF化
・電子契約システムの使用
ただし、タイの民商法典には、当事者が署名した文書がなければ無効あるいは強制力の生じない契約類型が定められています。その例は次のとおりです。
・不動産の売買契約(456条)
・不動産の賃貸借(538条)
・2000バーツを超える金銭消費貸借契約(653条)
・保険契約(867条)
・株式譲渡契約(1129条)
また、その他直筆サインが法律上要求されている書類としては、以下などがあります。※
・会社が発行する株券
・家族および相続事項に関する文書(例:遺言書)
※一部の税務上の書類(Tax Invoice等)も原則直筆サインが必要ですが、e-Taxシステムを利用すれば、電子署名が可能です。
実務上の対応としては、契約時にサインのスタンプ貼り付け等の電子署名を行いたい場合には、直筆署名が法律上求められている書類でないか確認すべきであり、また重要な契約にはこのようなスタンプ貼り付け等は使用しないことをお勧めします(相手方が契約が不成立であると主張するとそれが認められる可能性も十分にあります)。
また、政府機関に登録する必要がある取引についても、通常電子署名の使用ができません。例えば、不動産売買契約、3年を超える不動産の賃貸借契約については土地局への登録が求められますが、土地局は電子署名の文書を受け付けていません。
加えて、行政や銀行などへの手続の場合、担当官次第で直筆のサインがないと受け付けないケースがあります。この際は、ケースバイケースでご対応ください。
電子契約システム利用の留意点
ご質問の要約
取引契約を締結予定ですが、電子契約システムの利用を検討しています。この場合の留意点について教えてください。
カイプロ専門家の回答
タイにおいて、電子契約システムによる電子署名は一定の場合有効になります(電子取引法26条)。今回の取引契約についても、電子契約システムによる契約は可能であると考えます。
もっとも、使用予定の電子契約システムにおいて、貴社のDBD登記上のサイン方法に対応可能であるか確認が必要です。具体的には、サインおよび社印押印がサイン方法である場合、電子書類への社印印影の押印が可能であるかや、複数のサイン権者の共同サインが必要な場合に対応可能であるかなどです。
なお、将来署名の有効性が争われることになった場合に備え、本件の電子契約システムがPublic Key Infrastructure (PKI)システムを利用した電子署名であることなどのセキュリティや技術面の確認、及び、署名当事者の身元を確認・証明する証明書の発行が可能か否かはご確認ください(電子取引法8条、9条、26条参照)。
電子署名の有効性が争点となる場合の立証責任
ご質問の要約
電子署名による契約後、その有効性を将来的に争うことになった場合における有効性の立証責任の取り扱いを教えてください。
カイプロ専門家の回答
電子署名の有効性が争われた場合、原則としては、当該電子署名が有効であると主張する者が、当該電子署名の有効性を立証しなければなりません。しかし、「信頼できる電子署名」(電子取引法26条)に該当する場合には、当該電子署名の有効性が推定され、当該電子署名が無効であることを相手側が立証することとなります。
「信頼できる電子署名」の要件は次のとおりです。
・署名データが、使用される文脈の中で署名者にのみ紐づけられていること
・署名データが署名時に署名者の管理下にあったこと
・署名時以降に行われた電子署名の変更が検出可能であること
・情報の完全性を保証する署名が法令で求められる場合、署名時以降に行われた当該情報に対する変更が検出可能であること
確認した範囲では、電子契約システム・アプリケーション等であっても「信頼できる電子署名」に該当することを正式に確認した公的な見解などはないようです。
ただ、上記要件を満たすには、普及している電子契約システムを介して署名者の身元について確認手続を経たものがこれに該当すると思われますので、契約時にはそのようなシステム・アプリケーションを使用されることがいいかと思います。
なお、単純に手書き署名の文書をスキャンしたPDFの写し等はここでいう信頼できる電子署名には該当しないと考えます。
オンラインフォームへの入力も電子署名として原則有効
ご質問の要約
従業員との同署書について、紙ではなく、オンラインのアンケートフォームシステムを使用して同意取得をしたいのですが、これは法的に有効でしょうか。
「当社の方針に同意しますか? はい いいえ」という選択肢を作成し、選択してもらうものです。Web上での手続きのため従業員サインは取得できませんが、名前の入力は可能です。
カイプロ専門家の回答
(電子署名としての有効性)
タイ法上、電子署名の有効性は Electronic Transactions Act, B.E. 2544(2001)(以下「タイ電子取引法」)により認められています。
この点、同法4条によれば、「電子署名」とは、電子データに係る電子署名の所有者である者を示し、その者がその電子データの内容を認めたことを示す目的を有した、人と電子データの関係を示すための、電子データと共に使用される電子の形態で作成された文字、数字、音声またはその他の 信号を意味すると定義されています。
オンラインフォームに名前を入力する方法についても、この定義に含まれると考えます。また担当官からも、ご記載のように名前を入力する方法によっても署名として有効になりうるとの回答を得ています。
そのため、ご質問のような方法による同意であっても、電子署名としては有効であると思われます。
(個別法に関する留意点)
もっとも、本件の従業員との同意書が、労働条件の不利益変更や、個人情報の取り扱いについて等の記載がある場合には、労働者保護法や個人情報保護などの個別法上の「同意」として有効であるかという問題が別途生じます。
この点、ご質問のような方法が各個別法上の同意として充分であるかについては、当該同意書の内容やアンケート内容、回答方法等から、従業員がどこまで内容を理解し、「同意」していたかがケースバイケースで判断されることになります。
したがって、署名の方法のみを理由として無効となることはないと思われるものの、当該同意書の内容やアンケート内容によっては、従業員が「同意」としたとは認められず、無効となることもあり得ると考えます。
以上となります。
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