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本サービスへご相談のあった内容から、広く皆様に知っていただきたい内容を共有いたします。
本内容が皆様の会社運営の一助となれば幸いです。

回答者:JGA 坂田(タイ税務・BOI専門家)
TNY Legal 永田(弁護士・弁理士)
Kaipro 西川(公認会計士)

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※本内容は執筆時点(25年3月)のものです。
※本内容は顧問サービス「カイプロ」ご契約者様へ提供した内容のうち、一定期間経過したものを利用しています。

解散・清算の流れの概要

ご質問の要約

解散・清算の流れの概要を教えてください。

カイプロ専門家の回答

解散・清算の流れとして、主に以下の内容があります。

  1. 事業停止、解雇、資産負債の整理等の事前準備
  2. 解散の株主総会特別決議
  3. 解散・清算人登記、債権者通知(解散の総会決議日から14日以内)
  4. 解散の旨の歳入局への通知(解散登記日から15日以内)
  5. 歳入局にて納税者IDを返還(解散登記日から60日以内)
  6. 決算と会計監査
  7. 株主総会
  8. 法人税確定申告(解散登記日から150日以内)
  9. 税務調査開始の待機、税務調査対応等
  10. 税務調査、VAT登録抹消
  11. 清算完了承認の株主総会
  12. 清算完了登記(清算完了承認の株主総会の日から14日以内)
  13. 残余財産の分配

各項目の補足は以下の通りです。

1.事業停止、解雇、資産負債の整理等の事前準備
解散の株主総会特別決議の前に以下を行う。一般的に6か月程度を要する。
・取引先との契約解消(取引の終了)
・賃貸借契約その他契約の終了
・従業員の解雇
・許認可キャンセル(BOIなど含む)
・在庫、固定資産等の資産の整理
・債権債務の整理

2.解散の株主総会特別決議
特別決議のため、出席株主の議決権の75%以上の賛成により可決となる。

3.解散・清算人登記、債権者通知(解散の総会決議日から14日以内)
解散の登記、および取締役を清算人として登記する。また、解散の旨の新聞公告への掲載と債権者への通知を行う。
解散登記後は労働局(WP)の維持ができないため、この後の手続きは会計事務所や法律事務所等へ委託し行う。

4.解散の旨の歳入局への通知(解散登記日から15日以内)
併せて、VAT登録抹消の届出、VAT登録証の変換を行う。なおVATの登録抹消通知が届くまで月次のVAT申告が必要。

5.歳入局にて納税者IDを返還(解散登記日から60日以内)

6.決算と会計監査
解散登記日を会計年度末として決算のうえ、会計監査を受ける。

7.株主総会
解散登記日を会計年度末日とする決算書を承認する。

8.法人税確定申告(解散登記日から150日以内)
解散登記日を会計年度末日とする決算書をもとに法人税の納付を行う。

9.税務調査開始の待機、税務調査対応等
税務調査の開始まで、また開始後も調査対応期間が通常長期にわたる(通常1年から数年)。
その間、
・清算人は解散の登記の日から3か月毎に、商務省に進捗状況の報告を行う。
・清算手続き(解散から清算まで)の期間が1年を超える場合、株主総会を開催し、清算状況の報告、登記を行う。
・臨時株主総会(普通決議)を開催のうえ、資産の売却及び株主への分配決議、清算用監査報告書の承認を行なうことが可能。
・清算人の交代がある場合、株主総会を開催し、清算人交代から14日以内に登記を行う。

10.税務調査、VAT登録抹消
通常、過去3年分の取引が調査対象となる。税務調査の完了後、歳入局よりVAT登録抹消の通知を受ける。

11.清算完了承認の株主総会

12.清算完了登記(清算完了承認の株主総会の日から14日以内)
併せて会社の全ての帳簿・報告書類を提出する。

13.残余財産の分配
清算完了後、別途株主間での契約が無い限り保有株式数に応じて残余財産を分配する。

清算人の概要

ご質問の要約

清算人とはどのようなものか、概要を教えてください。 

カイプロ専門家の回答

清算人とは、清算手続き中の会社において、業務執行を行う者のことです。清算人は誰でも就任可能ですが、取締役と同等の責任を負うことから通常は従前にサイン権のある取締役であった方が就任することが一般的です。

清算人は解散の登記の日から3か月毎に、商務省に進捗状況の報告を行う必要があります。

資産、負債の整理の概要

ご質問の要約

在庫、固定資産等の資産の整理、および債権債務の整理とは、具体的にどのような内容でしょうか。

カイプロ専門家の回答

貸借対照表上(BS)で表示される資産や負債を売却等により整理し、BSを現金および資本金等(純資産)のみとすることです。

資産の売却等は解散登記後も可能ですが、臨時株主総会が必要である等の煩雑さがあるため、解散登記前に整理をしておくと効率的です。

具体的には以下のような内容を行います。
・売掛金の回収
・在庫、固定資産等の売却や廃棄
・その他の債権や資産の売却や放棄
・買掛金、借入金等の負債の返済、または免除を受ける

従業員の解雇に関する留意点

ご質問の要約

従業員の解雇について、何か留意点があれば教えてください。

カイプロ専門家の回答

従業員の解雇については、通常、会社都合の解雇または整理解雇の扱いとするのが一般的です。なお、裁判が係属中の場合には解散登記ができないため、解雇に関わる労働訴訟が起きないように留意します。

関連記事:整理解雇(事業所閉鎖,業績不振,機械化等)の基礎知識

借入金に関する留意点

ご質問の要約

当社は親会社から借り入れをしています。この場合の解散・清算に関しての留意点を教えてください。

カイプロ専門家の回答

タイにおいては、債務超過の状態では清算手続きを完了させられないため、解散決議の前に債務超過を解消することが一般的です。

債務超過の原因として親会社等からの借入金がある場合があります。返済余力があれば返済をしますが、通常解散を検討する時点では返済資金がないことが多いため、債務免除を受けることも多いです。

債務免除の場合、債務免除益が生じ課税をされてしまう場合があります。過年度の赤字による繰越欠損金により免除益を相殺できる場合は問題ありませんが、欠損金が不足する場合には、課税が生じないよう一度増資を受け、増資による資金を以て弁済するという形をとることが多いです。

その他の契約関係の整理の留意点

ご質問の要約

その他の契約関係の整理について、何か留意点があれば教えてください。オフィスの賃貸契約については退去すると執務場所がなくなりますが、これはどのように対応すればよいのでしょうか。

カイプロ専門家の回答

その他の契約関係について、例えばリース契約等がある場合には、途中解約が可能であるか、また違約金等について事前確認をお勧めします。

またオフィスの賃貸借契約を終了させた後は、レンタルオフィス等に会社住所を移すケースが多いです。

契約整理の関係でこのレンタルオフィスの契約は現地法人名義では行えないため、日本本社様名義での契約とし、1~2年程度分を前払いし、清算手続きの進捗に応じて追加契約、支払いを行う実務があります。

税務調査に関する留意点

ご質問の要約

清算手続き中の税務調査に関し、留意点を教えてください。

カイプロ専門家の回答

清算手続き中の税務調査に関しては、以下のような留意点があります。

1.過去の税務調査の状況
直近数年以内に税務調査を受けている場合、それまでの期間の税務リスクは既に一定整理されていることになりますが、調査を受けていない場合、税務リスクが高い状態となります。

歳入局としても、何か追徴が可能な状況があれば積極的に指摘をしてくるため、追徴により不測かつ大きなコストが生じる可能性があります。

特に、過去数年以内に会社全体が赤字、営業利益が赤字、あるいは粗利で赤字の取引が多額にある場合などは、推定課税による追徴の対象となりやすく留意が必要です。

2.経理担当スタッフとの退職後のコミュニケーション
税務調査の際、過去の取引の内容や、売価の設定、赤字取引について説明を要求される場合があります。これについて何も根拠等を提示できない、説明できない場合には追徴の指摘を受ける可能性があります。

通常、清算手続きの支援を委託する会計事務所において税務調査の窓口対応は可能ですが、それまで会計記帳を委託していた事務所でなければ過去の取引の説明ができません。そのため、過去の取引の説明が可能な経理スタッフについて、可能であれば退職後にも必要に応じて説明を依頼できるような体制を維持することが望ましいです。

この際、現地法人との雇用契約としては維持できないため、以下のような対応をする場合があります。
・解雇時に解雇補償金を上乗せのうえ、必要な場合に説明を依頼する。
・本社と該当スタッフ間で個人事業主としての契約を行い、必要な場合に説明を依頼のうえ支払いを行う。

帳簿保管に関する留意点

ご質問の要約

税務調査対応のためには帳簿保管が必要かと思いますが、これはどこに保管をすることが一般的でしょうか。

カイプロ専門家の回答

帳簿については、先ず解散登記時に保管先を商務省に提示する必要があり、また保管義務期間が10年間となっています。またご理解の通り、税務調査時にも帳簿書類が必要となります。

この点、帳簿書類については文書管理対応をしている預け倉庫に預けることが一般的です。保管義務期間の対応のため、また現地法人では契約ができないため、解散登記前に、親会社様等が現地の倉庫会社と契約し、10年分程度の料金の前払いを行う実務があります。

実際に書類を預ける場合には、税務調査の対象期間が通常では最大5年であることから、直近5年分の帳簿について番号管理をしたうえで預入をします。その後、税務調査の対応時には番号指定のうえ帳簿の取り寄せを行います。

以上となります。

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